ぬくもりを感じて
何者かにさらわれた凛花だったが、目が覚めると見覚えのある部屋に少し驚いていた。


「ここって・・・。」


「そう、私の家の居間よ。」


「坂野さん!あなたが私をこんな形で誘拐したの?」


「誘拐なんて人聞きの悪いこと言わないでよ。

ちょっと答えてくれればすぐに家にもどしてあげるわよ。」


「何?何を答えればいいの?」


「あなたが発案した安全装置の図面はどこなの?」


「そんなの知らないわ。」


「じゃ、質問を変えるわ。
あなたの発案した小型爆弾の図面はどこなの?
図面じゃなかったら、資料でもいいわ。」



「爆弾?何のこと・・・?」


「あなた私をバカにしてるの?
図面に疎くても爆弾の図面くらいわかるわ。」


「だから、何のこと?」


「ほんとに知らないの?
あなたのご両親だってその爆弾の図面を持っていて事故にあったのに。」


「だって、両親は乱暴な運転をしてきた人がお店に飛び込んできて・・・。
えっ・・・あれ?・・・なんか・・・違う・・・。」



「まさか・・・あなた、ご両親が亡くなったときの記憶がないの?」


「わからない・・・わからないわ。
確かに、両親はちょっと買い物があってそのときに突っ込んできた車にぶつかって・・・。

車がぶつかってきた?えっ・・・あっ・・・わからない!
わからないわ・・・私はどこにいたんだろう・・・どうして、ここにいるの?
どうして・・・助けて・・・助けて・・・セルジュ!」



「記憶がないのね。
小型爆弾の資料が手に入らないんじゃしょうがないわね。

もうちょっと泳がしておいてあげるわ。
あなたのお兄さんも行方知れずだし、アメリカにいた頃の知り合いもぜんぜんわからないんじゃ、どうしようもないものね。

じゃあ、私の記憶も消しておいてあげる。
明日からまた元気に女子高生してなさいな。」


手首に注射された凛花は坂野の家の近くの公園の芝生の上に転がされた。

そして、10分後に凛花を拾ってマンションへと送り届けた者がいた。



「目を覚まして!凛花ちゃん。」


「セ・・・ル・・セルジュ?」


「凛花ちゃん、しっかりするんだ。」


「あ・・・えっ?・・・遠藤先生?どうして・・・?」


「記憶がないんだね。しばらくはない方が都合がいいから、君は何も知らない方がいい。
時期が来ればきちんと話してあげる。

気分悪いところはないか?」


「大丈夫です・・・少し、頭がボゥ~っとしてるけど・・・。」


「もう少ししたら、満原先生とよねさんがここに来てくれるから。
安心して寝てるといいよ。」


「遠藤先生は?」


「俺は帰るよ・・・ここにいてはいけない人間なんでね。」


そう言って、遠藤はさっさといなくなってしまったのだった。
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