ぬくもりを感じて
再び目を覚ましたときには、智樹が心配そうに凛花を見ていた。


「せ、先生?」


「ここは君のマンションの中だ。
僕のことは智樹と呼んでいいよ。

誘拐されたときいたときは、心臓が止まるかと思ったけど・・・無事でよかった。」


「誘拐?私・・・誰かに誘拐されたんですか?」


「覚えてないのか?」


「どこかに連れていかれたような気もするんですけど・・・遠藤先生しか覚えてなくて。」


「遠藤先生が君を助けてここに連れて帰ってくれたんだよ。
それで、僕にきてくれって連絡があって・・・。」



「遠藤先生・・・どうして帰ってしまったの。
それに・・・遠藤先生を私・・・前から知ってるような気がして。」



「遠藤先生を前から知ってるだって?
(どうして・・・それになぜ、慌てて帰る必要があったんだ?)

忙しい人だから用事があったんだろ。
とにかく今日は、このまま休みなさい。」


そのまま朝までぐっすり眠ってしまった凛花だったが、おいしそうな朝食のにおいで目が覚めた。

智樹がせっせと朝食の準備をしている。



「智樹さん・・・ここに泊まってくださったんですか?」


「ああ、あっ、僕は凛花が心配だったから椅子に座ってただけだから・・・念のためだけど・・・。」



「すみません。ついあまえてしまって・・・。
私はもう大丈夫ですから、学校へ。

あ、家に帰ってから学校ですよね。」


「大丈夫か?食べて、学校に行けるか?」


「はい。もう大丈夫ですから。
ご心配かけてすみませんでした・・・。」


「顔色もよくなったみたいだな。
じゃ、僕は家に帰って着替えてから出勤するから。」


「はい。ありがとうございました。」


凛花は智樹が作ってくれた朝食をしっかりと食べてから登校した。


いつもと変わらない授業・・・でも何か変な感覚が残っている。


そして何か重要なことを忘れてる・・・。


(どうして、遠藤先生が私を助けてくれたんだろう?)


凛花はどうしても遠藤に自分を助けたわけをききたくて、放課後、保健室へ行ってみた。



「遠藤先生・・・私・・・。」


「来たか。仕方ないな・・・すべて思い出してほしかったけど、身の危険がある以上知らない方がいい場合もある。」


「どういうことですか?
私は何者なんです?それに、私たぶん・・・ここで先生に会う前から先生を知ってると思うんです。」


「そうだね。ずっといっしょにいたんだからわからないはずはなかったんだ。
でも、もういっしょにいない方がいい人間でもある・・・。」


「えっ?ずっといっしょにいた?」


「こうすればわかるかな。」
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