ぬくもりを感じて
その後、部屋に関することや邸でのルールなどをメイド頭の女性がやってきて説明を受けた。

智樹の部屋は位置的には離れていて、なおかつ智樹はふだんはこの邸には住んでいないことがわかった。


「あの、ここでの生活は智樹さんがおられないときには、どなたに相談すればいいんですか?

メイド頭のよねさんは管理人兼執事のぶんさんに相談したらいいって言っておられましたが、ぶんさんが今おられないらしくて。」



「ああ、ぶんさんは昨日、娘さんにお子さんが生まれそうだと出かけたんだ。
初孫だからな。
しっかり孫の顔をみたら、もどってくるし、彼がいない間は僕がいるから大丈夫だ。」


「そ、そうなんですか・・・あの、智樹さんはここが嫌いなんですか?」


「ん?なぜそう思うんだ?」


「なんか落ち着かないというか、ご自分のお家なのにくつろいでいないから。」



「そうだな。くつろげないんだ。
僕はふだんは学校のすぐ近くのアパートに住んでる。

テストの前後はその方が都合がいいんだ。
集中できるし、仕事もはかどる。

それに、ここは当分、君の家になるから、僕がいない方がいいだろう?」


「でも・・・私は親戚じゃないし。」


「だからだよ。親戚でもない女の子と一緒に居る方が困った噂をたてられる。
うちは兄がお金持ちだから、他にも家や別荘がある。

気にしないで、管理人のつもりで住んでくれていればいい。」


「わかりました。管理人のつもりでがんばります。」

とは言うものの、まだ16才というのに無理に決まってるじゃないと心が叫んでいた。



夕食はよねさんが作ってくれたものを、智樹と2人で食べながら智樹が明日からの予定の説明をしてくれた。


「明日からだけど、君には学校に通ってもらう。」


「は、はい。でも、どこの何ていう学校かとか知らないと・・・?」


「ここから歩いていける学校だ。
私立花霧高校の1年として転入手続きをとっておいた。」


「私が1年生やっていいんですか?」


「あれ、今16才だよな。僕が生年月日を間違えてた?」


「い、いえ、16才ですし、早生まれでもないんですけど。」


「びっくりさせるなよ。
急だったから大慌てで手続きやったから間違えたかと思ったじゃないか。」


「す、すみません。ぷっ!」


「ん?どうした・・・?」


「先生はお兄ちゃんと同い年なんですよね。
そのわりには老けてるなって思ったけど、あせるとお兄ちゃんと変わらないのかなって。

ちょっとおかしくって。ごっ、ごめんなさい。」


「ゴホン・・・どうせ僕は老けてるよ。
まぁ、うちには妹がいないからな。
不精ヒゲでもよれよれの白衣でも咎めるヤツもいない!」


「ダメですよ。きれいにすれば先生も人の子くらいにはきれいになりますから。」


「うるせ~!」
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