ぬくもりを感じて
凛花は途端に食欲がおちてしまった。


(何もきいてない・・・日下くんと最近2人で会ってもいなかったのに。)


いくら考えても、納得がいかずに凛花は眠れなかった。

ベッドに入ろうとしても眠れずに凛花は庭に出て、月をながめていた。


「まだ、起きていたのか?」


「だって、あんな話きかされて、眠れる方がどうかしてると思う。
まだ、演劇部の先輩に話でもきかされてれば、なんとか理解してたかもしれないけど・・・何もきいてないんだもん。」


「アメリカにいた頃は両親とかボーイフレンドにもキスしてたんだろ?」


「それは、挨拶としてしか・・・ほんとに軽くしか。
子どもだったから、ほっぺとか口の横とかで、お芝居でも愛情のあるキスなんてしたことないわ。」


「そうなのか・・・。」


「もう!いくら先生でも怒るわよ。
私を何だと思ってるのよ。

私は17才になったばかりの女子高生なのに。」



「17才になったばかり・・・って、誕生日はいつだったんだ?」


「3日前よ。10月17日。」


「なんでそういうことを早く言わなかった?」


「だって、もう高校生だし、誕生日を祝ってくれる身内だっていないし。
兄さんだって帰るっていっておきながら、まだ帰ってきてくれないし。」


「知ってれば祝いたいヤツもいたはずなのに。
少なくとも、僕は祝ってあげたかったのに。」


「いいよ、無理しなくても。
誕生日なんて毎年来るし、アメリカにいるときだって両親はケーキしか買って来なかった程度の誕生日だから。
私、飛び級で生徒じゃなかったでしょ。
だから、お誕生会なんてやったこともないし、あっ、記憶にないほどちっちゃい頃はしたらしいけど、思い出の記憶になくてね・・・ケーキを食べて終わったっていう記憶しかないの。

だから気にしなくていいから。」


そう、凛花が言った途端、凛花の目の前が真っ暗になった。


「うっ・・・何!?智樹さん・・・く、苦しいって。」


智樹は凛花を抱きしめてつぶやく。


「飛び級できるほどの天才なのに、バカだな君は。
そういうときは誰も祝ってくれないって文句を言えよ。
気にしなくていいなんて、大人ぶるな!」


「ほんとに気にしなくていいから、もういいって言ってるでしょ。
大人ぶって何が悪いの。」


「大人ならキスくらいで眠れなくならないぞ。
バカな凛花にもっとバカな僕からのプレゼントだ・・・」


「えっ・・・あ・・・んん・・・」

凛花はやっと目の前が明るくなったはずなのに、思わず目をとじて固まっていた。

智樹の唇が自分のそれに強く押し付けられ、唇から何かが入ってくる。


「うっ・・・はぁ・・・(私は今何をしてるの・・・私の口の中で何が起こっているの。
ちゅくちゅく音がする・・・智樹さんからのバースディプレゼントって・・・こんな長いキスなの。)」
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