ぬくもりを感じて
受付担当の3年生に演劇部の代役のことで、日下が説明をして頼み、2人は演劇部の部室へと走っていった。

部室では読み合わせ練習がもう始まっていて、本番さながらの練習をしていた。

そして一番奥に、智樹が台本を広げて椅子に座っているのが見えた。


ひと区切りで先のメンバーの練習が終わると、演劇部のみんなが凛花の方を見ている。

「2年1組の木吹凛花です。よろしくお願いします。」


「俺が無理をいって来てもらったんだ。よろしくな。」


「木吹さん、本当にいいの。日下が王子役なんだけど・・・?」


「はい、日下くんは嘘をつかないし、信じてますから。」


凛花がそういうと、部室がワッとどよめいた。



「木吹さん、お芝居っていっても相手が、つい最近まで不良の日下だと、何かと噂になって困ることになるかもよ。」


「うわさ?お芝居でしょう?」


「そうだけどさ・・・顔は近くに寄ってくるわけだし、いろいろ言われちゃうんじゃない?」


「大丈夫です。日下くんはきちんと約束してくれたから。」


「そこまで信じてるんなら、うわさなんて気にならないかもね。うふふふ。」


「えっ!?」


それから、服飾担当の女子に連れられて、衣装合わせに行った凛花は白雪姫の衣装にびっくりしていた。


「すごい本格的!この衣装で寝てるだけっていうのも、もったいない気がしちゃう。」


「でしょでしょ~!ラストシーンの白雪姫はけっこう衣装担当としてはがんばったのよ。
だっていちばんの見せ場じゃない?
なのに、日下くんとやりたくないとか、わがままな女が多くてさぁ!

衣装はバッチリ。それと、化粧をしてあげるからこっちにきて。」


白雪姫の舞台衣装と化粧を終えたところで、部室から講堂まで移動しようとすると、


「姫、途中いろんなものが落ちているから手を貸しましょう。」

と、智樹が手を差し出していた。

凛花は思わず出しかけた手をひっこめて、首をふった。

「大丈夫です・・・私・・・。」


困った顔の凛花に智樹が声をかけようとすると、ちょうど用意のできた日下が凛花に声をかけた。


「木吹、その格好での移動はつらいだろ。
俺が連れていってやる。ちょっとだけ我慢しろよな。」


そういうなり、日下は凛花をお姫様だっこして通路を歩きだした。


「お、おい、日下っ!ああっ!くそっ。」
< 42 / 60 >

この作品をシェア

pagetop