ぬくもりを感じて
凛花は遠藤の言葉を思い出したが、最後には自分を突き放したような言い方しか思い浮かばなかった。


そんな凛花の様子を見て、瑞歩は大樹の事務所に電話して今の大樹の様子や会社の様子をきいた。

大樹の秘書が電話で、大樹は警察からまだもどってないということだったが、犯人の詳細がきくことができた。


犯人の名前はナルム・リレン・カーリンが行動犯で、爆弾開発者がカスミ・ナガミネだという。


「ナルム・リレン・カーリン・・・そうか・・・。
セルジュ・リラ・カーリンの兄が、主犯だったんだ。」


「セルジュのお兄さんが・・・。
爆弾の関係者。情報はセルジュから・・・?」


「いや、それなら、おまえが逃げるときにかばって怪我なんてしないだろう?」


「ってことは・・・あとでわかったのかしら。
それで、別れを告げるためもあって・・・なの。」


「たぶんな。
つらい話だな・・・つらいな・・・セルジュの立場では。」



「守ってるつもりが、私の情報発信源になっていたのね。
そういうこと・・・。」



「大丈夫か?」


「うん。もう1年も前に終わってしまったの・・・。
いえ、私は記憶がなかったから終わらされてしまったというべきなのかな。」


「そっか・・・。
ところで、おまえのマンションに今日は厄介になっていいのか?」


「ええ、マンションは大樹さんが用意してくださったところだからお兄ちゃんにとっては気楽だと思うわ。」



「そっか、大樹さんが・・・。
大きな組織の頂点に立てば目が届かないところもあってしかるべきだろうにな。

そうね。でも、子どもにだって意思があるんだから、お父さんが息子に全部頼まなくったっていいと思うけど。」


「まぁな。うちは科学者の家族だけれど、継ぐものがなくてよかったのかもしれないな。
自分の未来は自分で何とかしろの方が、わかりやすいし、自分の力や運しだいだからあきらめもつくよな。」


「ええ・・・。
ねぇ、智樹さんのお母さんってどういう人だったの?」


「お手伝いさんだときいてるよ。
どこかの家でお手伝いさんをしていて、あのやり手の親父さんに見初められた。

認知もされたんだが、財産となると本妻さんが首を横に振ったそうだ。
あたりまえだけどな。

すべてを大樹さんが継ぐようにして、智樹はとくに欲もないヤツだったから、住む家だけをもらったらしい。」


「だからお母さんのお邸なのね。」


「でも、今回の事件で大樹さんは経営者としての資質を問われてしまったからな・・・。
本妻さんのひとり息子となるとつらいとこだろうな。」


「じゃあ、大樹さんが用意してくれたマンションも・・・住めなくなるのかも。」
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