ぬくもりを感じて
凛花は胸を押さえながら何とか言葉を押し出すように発した。

すると、智樹は真剣な目で凛花を見つめ、こう言った。


「僕は弱いヤツだ。ふだんは自分の将来のことだけでいっぱいいっぱいでやってきた。
実力以上のことをやろうとすると、震えてしまうのが本当の僕だ。

もちろん、そんなこと言ってる場合じゃないことだってわかってる。
本当のことをいうと君が卒業する日に言いたかった言葉がある。

それだけでも、こんなおっさんにとっては大変なことなんだ。
凛花、好きだ。君といっしょにいる時間が何よりも幸せを感じてる時間だった。

今、こんなこといえる状況じゃないかもしれないけど、もう限界だ!
今すぐ君を抱きたい!
遊びじゃない、衝動的な夜でもない、君を抱いたら結婚したい。
凛花・・・愛して・・・いるんだ。

10秒待つ。嫌ならすぐに自分の部屋に逃げていってくれ。
そして、明日・・・ここを出ていってくれ。
転校したいなら・・・手続きしてくれていい。

卒業するなら、もう僕はただの先生だから・・・その・・・あの・・・」


「ここでは嫌です。お風呂入ってきますから、智樹さんのベッドで待っててください。」


「凛花・・・それじゃ・・・いいんだね。」


「記憶がなかったときは自分が爆弾魔じゃないかって不安だったけれど、そうじゃないってわかってうれしかったの。
でも、こんなことになってしまって。
私・・・私は初めてだから、どうしたらいいのかわかりません。
初めて先生から習うことばかりです。」


「そうだな。君は初めて習うことばかりだ。
僕が心細がってる場合じゃなかったな。
1つ、頼みがある。お風呂もいっしょに入っていいか?」


「えっ!?」


「はずかしいか?」


「い、いえ。でもお風呂では何もしないで・・・。だめ?」


「わかった。何もしないよ。
じゃ、お湯ははってあるから行こうか。」


2人は緊張しながら浴室へ移動した。


「それにしても・・・あれだな・・・よく育ってるな・・・凛花の胸は。」


「きゃっ、智樹さんいきなりHな発言は・・・」


「はははっ。すっごくうれしくてさ。
2人でいっしょにお風呂に入ってるなんてな。」


そういってうれしそうにしてる智樹は凛花の知っている優しい目をしていた。

この後のことを考えるとドキドキするけれど、凛花のよく知っている智樹になってくれただけでも凛花はうれしい気持ちになっていた。
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