ぬくもりを感じて
智樹は夕飯をすばやく済ませると、顔を赤くしながら言葉を発した。

「お風呂に入らないか?
いや、兄さんが入院する前の続きをしないか?」


「いいの?
明日は早いお仕事ないの?」


「うん、現役教師は今年最後だ。
それに大学も取締り役会で決まった人物に頼むことにしたよ。

僕は高校の理事長と研究所管理官ってことでやっていくことにしたんだ。
つめこみはやっぱり無理だよ。
のんびりやの僕にはそのくらいかなって思ってるんだけど、そんな僕は嫌いかい?」


「ううん。ちょうどいいと思うよ。
もう女の先生のハーレムの中で寝てることもないよね。」


「だから、ハーレムって僕は知らないって。
寝てる間に何がどうなっていたんだ?」


「ふふっ、先生らしいわ。
お互いにやきもちやいてたのね。

お風呂に入りましょう。
でも、お風呂では何もしちゃダメよ。」


「わかってるよ。
今日は電話の電源までちゃんと切ってあるしな。」


「じゃ、私も・・・切っておかないと!」


その日の夜、もう何もじゃまされることはなく智樹の部屋のベッドで2人は重なった。


「ごめんな・・・結婚式が後になってしまって。」


「ううん、いいの。
私は何でも先生に教えてもらってばかりだもん。
料理みたいに上達するかしら?」


「まだそんな口をきけるのかい?
明日は欠席だな。」


「もう、ひどぉい!
でも、律子さん見てて、ずっとうらやましかったの。
私もあんな元気な赤ちゃんが早くほしい。」


「それはざ~んねん・・・かもしれないなぁ。
今日の僕は避妊しているからね。

でも明日はしてないかも・・・だな。」


「それじゃ、意味ないのに。」


「そうだな。どっちでもいいんだよ。
凛花が今とってもかわいいことだけは、確かなんだから。」


「うれしい、かわいいなんて智樹さんしか言ってくれないもん。」


「そっか?またおっさんくさいっていうんだろ?
だけど、かわいいっていうのは覆られないからな。」





凛花18才。
高校3年のクリスマスの3日前のことだった。



そして、新年には木吹凛花は満原凛花になり、卒業式の日には制服のジャンパースカートがかなりきつくなっていた。


「大丈夫か?苦しくないか・・・凛花?」


「うん、卒業するときは制服で卒業したいから。
でも・・・お式の間はウエストのホックははずしておくの。
えへへへ。」


「おいおい、今のは聞かなかったことにするぞ。
卒業証書を渡すときには、なんとか閉めておいてくれよ。

でないと、卒業証書を渡す僕の方がはずかしくなってしまうから。」


「そうね。子どもが成長したら笑い話に言えるかな。
友達はみんな知ってるけどね。うふふ。」


「よわったな。まぁ、僕が困ってたらみんなで助けてくれ。」


「もちろんよ。がんばってね・・・パパ!」


「おぅ。じゃ、行こうか・・・。」
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