ぬくもりを感じて
翌日、智樹の指示どおり、登校したら職員室へいくと、校長と智樹が待っていた。


「おはようございます。
今日からお世話になります、木吹凛花です。」


「帰国早々、大変だろうけど気楽に楽しんでくれたまえ。
1年生だから、まずは校風に慣れることからだな。

満原くんからきいたけど、お兄さんが事故処理手続きや、相続のことでアメリカにいってるらしいじゃないか。
何か困ったことがあったら、満原くんでも私でも遠慮なく相談してくれよ。」



「あ、ありがとうございます。
私そろそろ、教室へ行かないと・・・失礼します。」


智樹に連れられて3組の教室へと向かう途中で、凛花は智樹に尋ねた。


「先生、兄は・・・なぜ事故処理とか相続とかに言ったことになってるんですか?
旅行じゃなかったんですか?」


「そっか。校長がしゃべってしまったんだな。
瑞歩はじつはアメリカへ行って調べてるんだ。
事故の原因を・・・ちょっとご両親の亡くなり方が不自然だったから」


「普通の事故じゃなかったんですか?」


「わからない。瑞歩の話では相続の話を弁護士がしてきたときに、おかしいなと思ったらしいんだ。
なぜかっていうと・・・君に残してあげるものが何も記されてなかったからだそうだ。」


「えっ・・・。」


「事故死していたら、ご両親が用意のいい人の場合だったら兄妹それぞれに遺産相続の遺言書くらい用意してると思うんだ。
でなかったら、何も用意がなく、法定相続人としての相続で君たちは公平な分配をされるはず。

ところが、兄だけに残す遺言書しかなかったらしい。
あとは帰ってからまた話す。
とりあえず、クラスのみんなに元気に挨拶してくれ。」



凛花は学校にいる間はとにかく兄や両親のことは思い出さないようにしようと思った。

智樹にいわれて席につくと、いきなり机の中から大きなカエルが出てきて凛花は声をあげた。


「きゃああああ!!!いやぁ!」


叫んで思わず席を立ってしまった凛花を抱きとめるように、隣にいた少年が抱え、


「ごめんな。俺の罰ゲームだったんだ・・・君の席はここじゃなくて隣なんだ。」


と言ったが、隣の席の少年が凛花の顔を覗き込んだ途端、凛花は気を失っていた。


「どうした?日下!」


「えっと木吹さんがびっくりして・・・気を失ってる・・・。」


「日下、そっと床に降ろすんだ。」


日下は前日にクラスの男子5人とカードゲームをして大敗を期して、今朝その罰ゲームとしてカエルが飛び出してくる机のことを知ったのだという。


「ごめん、ほんとに・・・ごめん。すみません・・・。」


「とにかく保健室に彼女を運ぶのを手伝え!」
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