桜のキセキ


「………………………。」


「………………………。」


悠飛は、私の隣に座ったと思えば無言になった。



なんだろう…。




この数十秒の無言が苦しい。




何か喋ろう。





よし、病室でも聞こうかな!




「「あのさ」」




………………えっ?




「ふ…ふはははははははは(笑)」




突然、言葉が被って悠飛は大爆笑した。


むーっ。



なによ!



私が勇気を持って、言葉を発したら被るなんて!




悠飛、笑いすぎでしょ!



未だに笑っている悠飛をジロリと睨んだ。





「ははは…(笑)わりぃわりぃ!にしても腹痛ぇー(笑)」




「もう知らない!」





ふん!




バカ悠飛!




私はそっぽを向いた。




「だから、ごめんて!こっち向いてよ」




「知らない!」




「亜弥さんー?こっち向いてくれなきゃ取れないでしょー?」



え?



なになに?




取る?



私は、疑問に思いすねた心を沈めた。




悠飛のほうを向くと、突然私の前髪に悠飛の手が触れた。




「ちょ…!悠飛!」




「バカっ!動くな!」




そうしてすぐに手が離れたのを確認して、とっさにつむった目を開けた。




「ほら」



スッと差し出された悠飛の手のひらには、1枚の桃色の桜の花びら。



「あ…!」




「髪についてた。突然ごめんな。びっくりしただろ?」



私の髪に触れたのはこれを取るためだったのか。




「ううん。こっちこそごめん。あと、ありがとう」



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