桜のキセキ
それから私たちは、お互いに話した。
すごくくだらない事とか夢とか。
悠飛と私は、本当に気が合う。
だから話も弾んだ。
悠飛の夢はプロのバスケットボールの選手。
例えどんな夢でも目標があることは大切。
悠飛はかっこいいと思った。
顔だけじゃなく、心も。
まあ、悠飛は女子にモテますよ的なイケメン顔だけどね。
話している間に、二人の間を吹き抜ける春風は優しかった。
たくさん話しまくって、気付いたら空は赤紫色の夕焼けに染まっていた。
「たくさん話したな」
「そうだね」
由梨以外と話すのは久々なもんだからついつい話し込んでしまう。
楽しかった。
幸せな時間は一瞬んだね。
辺りをちらりと見渡す。
最初は誰も居なかったけど、ちらほら数人の患者が散らばっていた。
散歩とか煙草とか、個々に行動していた。
「冷えてきたしそろそろ病室戻るか」
「うん!」
「ほら、手。」
そう言いながら悠飛は照れ臭そうに長い指先を私に差し出した。
恥ずかしいのやら嬉しいのやらなんだか複数の感情が混ざったけど、私は素直に悠飛の手を握り立ち上がる。
悠飛の手は、骨張っていてゴツゴツしている。
だけど、大きくて温かいから安心する。
それから二人は手を繋ぎながら病院内へと戻った。