桜のキセキ

いつもなら長い白い廊下を1人で歩くだけだった。


それがとても長く感じていた。


だけど、今日は違う。
少し喋っただけ、気が合うだけ、たったそれだけでも悠飛と歩くこの時間はあっという間だった。


「「え??」」

2人の声が重なった。


「まってまって。ここ?悠飛の病室?」


「そうだよ!?亜弥は?まさかの隣!?」


それはそれはびっくり。

悠飛と病室は私のお隣さんだったのだ。

「最近、病室が移動とかでガヤガヤしてたの悠飛だったのね」

そう最近、
お隣さんの空き室に誰か入るとかでベッドの移動の音やらが少し聞こえたのだ。


「そうなんだよ。実は・・・。ごめん、うるさかった?」

少し照れくさそうに、だけど気遣ってチラリと横目で私を見る悠飛。


「ぜーんぜん!むしろ嬉しい!これからすぐ遊びに行けるね!」


ふふふっ!と浮き足立つ私は、胸の鼓動が早まり、頬に微かな熱を帯びたのをバレないように笑った。

「俺は暇人だからいつでもおいで。今日は疲れたでしょ?ゆっくり休みな」

そう言って今まで繋がれていた2人の手は、寂しそうに離れていった。


「うん!悠飛もね!ありがとう」


「おう」


それだけ言うと彼は病室に戻っていった。

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