冬夏恋語り
6, リスタート
カジュアルな服装に身を包みリラックスした様子の男性5人に対し、私以外の女性4人は、服装もメイクも相当に気合が入っている。
自己紹介に添える一言も、男性陣は軽く触れる程度だったのに、女性陣は身振りもまじえ男性へ並々ならぬ意欲のアピールがあり、彼女たちに圧倒された私は 「よろしくお願いします」 と言うのが精一杯だった。
目立たぬよう、服もバッグもおとなしい色を選びアクセサリーも一切身につけずにきた。
「座ってるだけでいいから」 と言われていたので、会話に積極的に加わることもなく、ほかの人の話にうなずくだけ。
人数合わせのために呼ばれた私は、そこに存在していればいいのだが、興味のない席に座る苦痛がこれほどとは思わなかった。
会が始まってから何度時計を見ただろう、2時間の予定なのにまだ30分もたっていない。
こんなことなら断ればよかったと思うが、自分の意思で 「いいですよ」 と返事をしてしまったのだから、いまさら悔いてもどうにもならないのだが……
先週のこと、従姉妹から 「ごめん、引き受けて」 と、先に謝られて頼まれたのは、合コンへの参加だった。
いつものごとく、母の使いで従姉妹の家に届け物をし、話があるの……コーヒーを用意するから待っててねと言われたときから、簡単ではない話だろうとは思っていた。
悩みの相談でもあるのかと思いながら、首がすわったばかりの大空くんの相手をしていると 「ユキちゃん、ごめん、引き受けて」 といきなり手を合わせて頼まれた。
合コンに参加して欲しいと聞いて、「無理、無理、無理」 と三回も断ったのに、打ち合わせたように帰宅したダンナさまの脩平さんにも、お願いしますと頭を下げられた。
その話は、脩平さんの職場の先輩からもたらされたものだった。
先輩が好意を寄せる女性が結婚を意識した合コンに参加すると聞き、先輩は慌てふためき速攻で女性に告白すると、女性も先輩に好意を持っていたことがわかった。
そうなると、先輩としては合コンの参加など認められない、けれど彼女の方は頭数に入っているから断れないし、代理の女性のあてもないと言う。
後輩の脩平さんへ、彼女の代わりがいないだろうかと相談があり、ふと私の顔を思い出した脩平さんは 「妻の従姉妹に聞いてみましょうか」 と言ってしまった。
先輩は大喜びで、その場で合コンの日時を伝えてきたそうだ。
事情を聞くと同情するものだったが、代打を引き受けるのは気が重い。
男性参加者の年齢は30代後半、女性は30歳になるかならないかの人ばかり、私は30代半ばで微妙な年齢だ。
年齢的に無理があるのではないかと言うと……
「深雪さん、いつも年齢より若く見られるでしょう」
「小柄だからだと思うけど……」
「それだけじゃないよ。ユキちゃん、色も白くて肌も綺麗だもん。若い子に負けてない。
それに、運命の出会いがあるかもしれないじゃない。失恋は恋愛で補うものよ」
「僕もそう思うな」
ふたりから、こんな風に背中を押された。
しばらく考えてから 「うん、いいですよ」 と返事をしたのは、従姉妹夫婦に説得されたからでもなく、運命の出会いを期待したからでもない。
あたらしいことに挑戦してみようと思ったからだ。
西垣さんとの結婚がなくなり、吹っ切れて気分も晴れるはずだったのに、いざそうなってみると気持ちは沈むばかりだった。
ふさぎこんでいる私へ両親は腫れ物に触るように接し、親子の会話も少なくなり部屋で過ごすことが多くなっていた。
そんな私を、外へ引っ張り出そうとしてくれる従姉妹夫婦の気持ちも嬉しかった。
いつまでも両親に心配をかけたくない、従姉妹夫婦の気持ちにも応えたい、そんな思いから合コンの参加を決めたのだった。