「異世界ファンタジーで15+1のお題」三
008:描かれた波紋
*
「ルシアン、待って!
そっちに行っちゃいけないわ!」
息を切らして追いかける少女の前を金色の髪の少女が走り抜ける…
「メリッサ、あなたは本当に心配性ね!
大丈夫よ。
いくら私だってここから先には行かないわ。」
金色の髪の少女は不意に立ち止まり、後ろを振り向いた。
「本当かしら?あなたには無鉄砲な所があるから心配だわ。」
追いかけて来た少女も、同じように透き通るような金色の髪をしていた。
ルシアンは、大きな翼を広げそのまま飛びあがると、高い木の枝に腰掛けた。
メリッサもすぐにその隣に並んで腰掛ける。
その木には、真っ赤な林檎のような実が実っていた。
果実の甘い香りを含んだ気持ちの良い風が、二人の頬を優しく撫でる…
「メリッサ…あそこには一体何があるのかしら?」
「さぁ…」
「あなた、そんなことは考えたこともないって顔ね。」
「その通りよ。
あそこに近付いちゃいけないってことは、天界の者なら皆知ってることですもの。
きっと良くないものがあるに違いないわ。
そんな怖ろしいもののことなんて考えたくないもの…
本当はここまで来るのだって嫌なくらいよ。」
「メリッサ…あなたはまだ若いくせにどうしてそう物分りが良いのかしら…
私は昔からあの場所が気になって仕方がないわ。
近付いちゃ駄目なのなら、なぜ駄目なのか説明するべきよ!
でも、誰も教えてはくれない…それは、誰も本当のことを知らないからだわ。」
「本当のこと?」
「そうよ。
本当はそんな怖いものじゃないのかもしれないし、もしかしたら何もないのかもしれない。
きっと本当は何もないのよ。
だって、私は何度もここへ来て、この場所からあそこを見たけど、なにもないんだもの。
メリッサもそれは知ってるわよね?」
「そりゃあ…あなたに連れられて私も何度かここに来たけど、確かに何もないわ。
でも、やっぱり駄目よ。
近付いちゃ駄目だって言われてる場所には、近付いちゃいけないのよ!」
「あ~あ…あなたってつまらない人ね。」
ルシアンは手を伸ばして果実を掴み取ると、そのまま一口頬張った。
メリッサは、そんなルシアンをただ黙ってみつめていた。
「つまらない、つまらない!
本当になにもかも面白くないわ!」
ルシアンは枝の上に立ち上がり、禁忌の場所に向かって果実を投げた。
真っ赤な果実は、緩い放物線を描きながら、禁忌の場所へ落ちて行く…
「あ……」
二人は同時に声を上げた。
果実は地面に吸いこまれ、その周りに小さな波紋が広がったのだから…
「ルシアン、待って!
そっちに行っちゃいけないわ!」
息を切らして追いかける少女の前を金色の髪の少女が走り抜ける…
「メリッサ、あなたは本当に心配性ね!
大丈夫よ。
いくら私だってここから先には行かないわ。」
金色の髪の少女は不意に立ち止まり、後ろを振り向いた。
「本当かしら?あなたには無鉄砲な所があるから心配だわ。」
追いかけて来た少女も、同じように透き通るような金色の髪をしていた。
ルシアンは、大きな翼を広げそのまま飛びあがると、高い木の枝に腰掛けた。
メリッサもすぐにその隣に並んで腰掛ける。
その木には、真っ赤な林檎のような実が実っていた。
果実の甘い香りを含んだ気持ちの良い風が、二人の頬を優しく撫でる…
「メリッサ…あそこには一体何があるのかしら?」
「さぁ…」
「あなた、そんなことは考えたこともないって顔ね。」
「その通りよ。
あそこに近付いちゃいけないってことは、天界の者なら皆知ってることですもの。
きっと良くないものがあるに違いないわ。
そんな怖ろしいもののことなんて考えたくないもの…
本当はここまで来るのだって嫌なくらいよ。」
「メリッサ…あなたはまだ若いくせにどうしてそう物分りが良いのかしら…
私は昔からあの場所が気になって仕方がないわ。
近付いちゃ駄目なのなら、なぜ駄目なのか説明するべきよ!
でも、誰も教えてはくれない…それは、誰も本当のことを知らないからだわ。」
「本当のこと?」
「そうよ。
本当はそんな怖いものじゃないのかもしれないし、もしかしたら何もないのかもしれない。
きっと本当は何もないのよ。
だって、私は何度もここへ来て、この場所からあそこを見たけど、なにもないんだもの。
メリッサもそれは知ってるわよね?」
「そりゃあ…あなたに連れられて私も何度かここに来たけど、確かに何もないわ。
でも、やっぱり駄目よ。
近付いちゃ駄目だって言われてる場所には、近付いちゃいけないのよ!」
「あ~あ…あなたってつまらない人ね。」
ルシアンは手を伸ばして果実を掴み取ると、そのまま一口頬張った。
メリッサは、そんなルシアンをただ黙ってみつめていた。
「つまらない、つまらない!
本当になにもかも面白くないわ!」
ルシアンは枝の上に立ち上がり、禁忌の場所に向かって果実を投げた。
真っ赤な果実は、緩い放物線を描きながら、禁忌の場所へ落ちて行く…
「あ……」
二人は同時に声を上げた。
果実は地面に吸いこまれ、その周りに小さな波紋が広がったのだから…