「異世界ファンタジーで15+1のお題」三
012:破かれた書物




「ウィリアム!
どこだ?どこにいる?」

乱暴に扉を開け放ち、息を切らせたラーシェルが部屋の中に飛び込んだ。



「これは、これは、ラーシェル様。
いかがなされたのです?」

「ウィリアム…
この文字が読めるか?」

ラーシェルは、ルシアンからの手紙を差し出し、最後の文字を指差した。
そうは言われても、自然とその前に書いてあることも目に入る。
ウィリアムは、そこに書かれたことを信じられない想いでじっとみつめた。



「どうなんだ?読めないのか?」

「は…はい…はっきりとはわかりませんが…一部だけはわかります。
おそらく、これは『愛』…
そんなことよりも、ラーシェル様、ここに書いてあることは本当のことなのですか?
ルシアン様が天界の者だなんて…」

「……ウィリアム…
そなたはどう思う?」

「わ…私でございますか?」

ウィリアムは一瞬戸惑ったような顔をして俯いたが、やがてその顔を上げ、ゆっくりと頷いた。



「私は…本当ではないかと思います。
ルシアン様が話されていた言葉は、その発声からしても明らかに地上のものとは違うものでした。
それに…ルシアン様はしきりに背中を気にしておいででした。
背中のひどい傷…あれは翼のもぎ取られた跡ではないのでしょうか?」

「……馬鹿な!」

ラーシェルは、テーブルを拳で強く打ち叩く。
ウィリアムは、そんなラーシェルを憐れみのこもった眼差しでみつめると、そのまま隣の部屋に向かった。



「ラーシェル様。」

戻って来たウィリアムの手には、古びた一冊の書物が大事そうに抱き締められていた。
ウィリアムはテーブルの上にその書物を広げ、ゆっくりとページをめくる…



「ラーシェル様、ここをご覧下さい。」

ウィリアムが指差した先には、ルシアンの手紙に書かれた文字と同じものがあった。

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