「異世界ファンタジーで15+1のお題」三
「そうか…
やっぱり、君も同じだったんだね。」

自分の推測が正しかったことを強調するかのように、アンリは何度も頷いた。



「それで、その人逹はどこへ…?」

「さぁ…この世界のどこかにいるんじゃない?」

「この世界に…?
元の世界に戻った人はいないの?」

「そんなこと知らないよ。
元の世界に戻ったって、連絡をくれる人なんていないからね。」

冗談のつもりだったのか、アンリはそう言ってくすりと笑った。
フォルテュナには面白いとは感じられなかったが、アンリに釣られて知らないうちに微かな笑みを浮かべていた。



「僕はどうなるんだろうな…」

「さぁ…それは君次第なんじゃないかな?」

アンリの言う事が間違ってはいないことはよくわかっていた。
フォルテュナに対して悪意があるというわけでもないと思えた。
しかし、異世界に飛ばされたばかりのフォルテュナにとって、その言葉は気分の良いものではなかった。



「そうだね…僕がどうなろうと君には関係ない事だものね…」

アンリは、フォルテュナの心の動きを感じたのか、それには何も答えなかった。



「世話になったね。
じゃあ、僕はこれで…」

自分でも何をそんなに感情的になっているのかよくわからなかった。
フォルテュナは、おもむろに立ちあがる…
とにかく、ここを…アンリの目の前から離れたい衝動が彼を突き動かしていた。



「……そんなに急ぐことないじゃない。
まぁ、座ってよ。」

アンリが、フォルテュナの腕を取り、その肩を押さえる。
立ちあがりたい気持ちと、引き止められてどこかほっとした気持ちが交じりあい、結局は後者が勝利した。



「君が出て行くのは自由だけど、少しくらいはここのことを知ってた方が便利かもしれないよ。
聞きたくなければ無理にとは言わないけど。
とにかく、少し説明するから良かったらそこにいて。
何も話さなくて良いから…」

アンリが自分のことを気遣っていてくれることがよくわかった。
そもそも、それほど感情的になる必要はどこにもなかったのに…
フォルテュナはほんの少し前の自分を恥じた。
けれど、その気持ちを素直に現すだけの勇気をフォルテュナは持ち合わせていなかった。



「ここは黄昏の町と呼ばれてる…
ここにあるのは、オレンジ色の空だけなんだ。
僕はオレンジの空しか知らないからなんとも思わなかったけど、他所の町や世界から来た人は酷く驚いてたよ。」

「ここは、一日中、ずっとこんな風だっていうのかい?」

「そうだよ。
それって、そんなに不思議なことなの?」

逆に問われたフォルテュナは、返す言葉に頭を抱えた。
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