世界で一番好きな人
真っ暗な道を、掛川さんと並んでゆっくり歩く。
頭の中では、さっきの切ない『別れの曲』が、ずっと流れ続けていた。
「ねえ、掛川さん。」
「なに?瞳子さん。」
「さっき、道ならぬ恋でもいいって言ったよね。」
「言ったよ。」
「それなら……、私は掛川さんに、恋をしてもいい?」
「私に?……それはまた、どうして。」
自分でも、大胆なことを言っているのが分かっていた。
でも、私はまるで、さっきのピアノのメロディーに酔っているかのようで。
いつもなら、決して口にしないようなことを、口に出していた。
「どうして?どうしてだろう。」
「恋は、落ちるものだよ、瞳子さん。恋をしてもいいか、なんて、訊くものじゃない。」
「でも……、多分、私はもう、落ちたんだもん。」
「え?」
「恋をしたの。あなたに。」
「瞳子さん。」
掛川さんは立ち止まった。
そして、私の大好きな、柔らかな笑みを浮かべる。
「あなたに、本当の幸せが何かを教えてあげることは、できるか分からないよ。」
「そんなの、自分で見つけるものでしょう?」
「そうだね。」
私は、掛川さんに恋をしている。
これは、私に与えられた機会なのかもしれない。
自分を変える機会。
周りの目を気にせずに。
将来の計画なんて忘れて。
ただ、夢見るように恋をしてみたい。
掛川さんを、愛したい。
「今日は、5年ぶりにピアノを弾いたから、なんだか楽しい気分だ。」
「5年ぶり?」
「ああ。5年ぶり。」
5年の間、ピアノに触れなくなるきっかけとなった出来事は、一体なんだったのだろう。
そして、5年もの間触れていなかったピアノに、再び触れるきっかけとなったのが私だなんて。
謎に包まれた掛川さんを、少しずつ知る度に。
どんどん彼の中に引き込まれていく。
もう立ち止まることはできない。
浮足立った心で、そんなことを思った。
頭の中では、さっきの切ない『別れの曲』が、ずっと流れ続けていた。
「ねえ、掛川さん。」
「なに?瞳子さん。」
「さっき、道ならぬ恋でもいいって言ったよね。」
「言ったよ。」
「それなら……、私は掛川さんに、恋をしてもいい?」
「私に?……それはまた、どうして。」
自分でも、大胆なことを言っているのが分かっていた。
でも、私はまるで、さっきのピアノのメロディーに酔っているかのようで。
いつもなら、決して口にしないようなことを、口に出していた。
「どうして?どうしてだろう。」
「恋は、落ちるものだよ、瞳子さん。恋をしてもいいか、なんて、訊くものじゃない。」
「でも……、多分、私はもう、落ちたんだもん。」
「え?」
「恋をしたの。あなたに。」
「瞳子さん。」
掛川さんは立ち止まった。
そして、私の大好きな、柔らかな笑みを浮かべる。
「あなたに、本当の幸せが何かを教えてあげることは、できるか分からないよ。」
「そんなの、自分で見つけるものでしょう?」
「そうだね。」
私は、掛川さんに恋をしている。
これは、私に与えられた機会なのかもしれない。
自分を変える機会。
周りの目を気にせずに。
将来の計画なんて忘れて。
ただ、夢見るように恋をしてみたい。
掛川さんを、愛したい。
「今日は、5年ぶりにピアノを弾いたから、なんだか楽しい気分だ。」
「5年ぶり?」
「ああ。5年ぶり。」
5年の間、ピアノに触れなくなるきっかけとなった出来事は、一体なんだったのだろう。
そして、5年もの間触れていなかったピアノに、再び触れるきっかけとなったのが私だなんて。
謎に包まれた掛川さんを、少しずつ知る度に。
どんどん彼の中に引き込まれていく。
もう立ち止まることはできない。
浮足立った心で、そんなことを思った。