世界で一番好きな人
三人
次の休みに、私は掛川さんの家に行くことにした。
お土産に、アンジュールのケーキを持っていく。
チーズスフレと、イチゴトルテはもちろん、他にも何種類か。
掛川さんの家が近付くと、何だか緊張してきた。
ピンポーン。
「はい。……ああ、瞳子さん。さあ。」
「おじゃまします。」
いつもよりラフな服装をした掛川さんが、扉を内側から開けてくれる。
背広よりも若く見えて、私は思わずどきっとしてしまう。
「薫さん、瞳子さんが来てくれたよ。」
「ほんと?」
奥からトコトコと走って出てくる薫ちゃん。
「瞳子さん!」
「薫ちゃん。元気だった?」
「うん!」
掛川さんと薫ちゃんが並ぶと、やはり目がそっくりだ。
私はなんだか、微笑ましい気持ちになる。
「これ、どうぞ。」
「え、気を遣わなくてよかったのに。……あ、アンジュールじゃないですか。」
「そうですよ。」
「あそこ、テイクアウトなんてできるのですね。知らなかった。」
「え、知らなかったんですか?」
「知りませんでしたよ。こんなに近くに住んでいるのに。」
掛川さんが、嬉しそうにケーキの箱を受け取ってくれる。
「雪人さん、それなあに?」
「瞳子さんが、ケーキを買ってきてくれた。」
「ほんとう?」
あれ、と思う。
薫ちゃん、お父さんのことを雪人さんって呼ぶんだ。
そう言えば掛川さんも、薫ちゃんのことを薫さんって呼んでいた気がする。
掛川さんが50代半ばだとすると、薫ちゃんは随分遅いお子さんだ。
だからこそ、掛川さんと薫ちゃんの間には、何とも言えない温かい空気が流れている。
それは、よそ者の私をも受け入れてくれるような、温もりに溢れている。
私はそれから、掛川さんと薫ちゃんと共に、まるで本当の家族のような時を過ごした。
久しぶりに、心が満たされた気がした―――
お土産に、アンジュールのケーキを持っていく。
チーズスフレと、イチゴトルテはもちろん、他にも何種類か。
掛川さんの家が近付くと、何だか緊張してきた。
ピンポーン。
「はい。……ああ、瞳子さん。さあ。」
「おじゃまします。」
いつもよりラフな服装をした掛川さんが、扉を内側から開けてくれる。
背広よりも若く見えて、私は思わずどきっとしてしまう。
「薫さん、瞳子さんが来てくれたよ。」
「ほんと?」
奥からトコトコと走って出てくる薫ちゃん。
「瞳子さん!」
「薫ちゃん。元気だった?」
「うん!」
掛川さんと薫ちゃんが並ぶと、やはり目がそっくりだ。
私はなんだか、微笑ましい気持ちになる。
「これ、どうぞ。」
「え、気を遣わなくてよかったのに。……あ、アンジュールじゃないですか。」
「そうですよ。」
「あそこ、テイクアウトなんてできるのですね。知らなかった。」
「え、知らなかったんですか?」
「知りませんでしたよ。こんなに近くに住んでいるのに。」
掛川さんが、嬉しそうにケーキの箱を受け取ってくれる。
「雪人さん、それなあに?」
「瞳子さんが、ケーキを買ってきてくれた。」
「ほんとう?」
あれ、と思う。
薫ちゃん、お父さんのことを雪人さんって呼ぶんだ。
そう言えば掛川さんも、薫ちゃんのことを薫さんって呼んでいた気がする。
掛川さんが50代半ばだとすると、薫ちゃんは随分遅いお子さんだ。
だからこそ、掛川さんと薫ちゃんの間には、何とも言えない温かい空気が流れている。
それは、よそ者の私をも受け入れてくれるような、温もりに溢れている。
私はそれから、掛川さんと薫ちゃんと共に、まるで本当の家族のような時を過ごした。
久しぶりに、心が満たされた気がした―――