世界で一番好きな人
そして、少し経ったある日。
「パンフレットとポスターが出来ました!どうですか?掛川さん。」
「おおっ、素敵じゃないですか。」
「結構細かく注文を出したんですよ。ここは、こうとか。掛川さん、お洒落だから。」
「いいえ、瞳子さんのセンスじゃないですか。とてもいいと思います。恥ずかしいくらいだ。」
はにかむ掛川さんの視線を、私もたどる。
そのポスターには大きな字で、「掛川雪人 復帰コンサート」と書いてある。
プログラムの一部と、掛川さんの写真。
切なげなその表情が、訴えかけるようにこちらを見つめている。
「このキャッチコピーは、瞳子さんが考えてくれたんですか?」
「……ええ。どうでしょう?あ、これはまだ決定版ではないので、これから変えることもできますよ。」
「いいえ。瞳子さんのセンスに、大分圧倒されているんですよ。嬉しいです。」
そう言われて、私は頬を染める。
そう、そこに私が入れたキャッチコピーは……。
『今を生きるということ』
さほど、褒められるほどのフレーズではないけれど。
これは私の願いだ。
大事な人を失って、暗闇の底に溺れていた掛川さん。
私は過去を生きている、と言って、私との間に一線を引いた掛川さん。
だけど、そんな彼が立ち上がって、過去ではなく今を生きるきっかけ。
それが、このコンサートなんだ。
そんな掛川さんに、きっと勇気づけられる人はたくさんいるだろう。
掛川さんの事情を知らなくたって、復帰コンサートに心を動かされる人は、たくさんいるはずなんだ。
「このポスターが完成したら、県内の公的機関すべてに貼ってもらいます。パンフレットも、色んなところに置いてもらいましょう。」
「瞳子さん、頼もしいですね。」
「ふふ、私は一応、県庁職員ですから。……たまには職権乱用しても、いいですよね。」
「本当に、何から何までありがとう。だけど、瞳子さん、無理していないですか?」
「いいえ。大丈夫です。ここのところ、アドレナリンが出っ放しです!こんなに嬉しいイベント、今までの人生で初めてですから。」
本当に、そうなんだ。
こんなに嬉しいことってない。
大好きな人の、大事な復帰コンサートを手がけることができるなんて。
「瞳子さんには、最前列の一番いい席を用意します。薫と一緒に来てほしい。」
「ええ、もちろん行きます。」
涙が出るくらい嬉しくて。
掛川さんの復帰コンサートの成功を、心の底から祈った―――
「パンフレットとポスターが出来ました!どうですか?掛川さん。」
「おおっ、素敵じゃないですか。」
「結構細かく注文を出したんですよ。ここは、こうとか。掛川さん、お洒落だから。」
「いいえ、瞳子さんのセンスじゃないですか。とてもいいと思います。恥ずかしいくらいだ。」
はにかむ掛川さんの視線を、私もたどる。
そのポスターには大きな字で、「掛川雪人 復帰コンサート」と書いてある。
プログラムの一部と、掛川さんの写真。
切なげなその表情が、訴えかけるようにこちらを見つめている。
「このキャッチコピーは、瞳子さんが考えてくれたんですか?」
「……ええ。どうでしょう?あ、これはまだ決定版ではないので、これから変えることもできますよ。」
「いいえ。瞳子さんのセンスに、大分圧倒されているんですよ。嬉しいです。」
そう言われて、私は頬を染める。
そう、そこに私が入れたキャッチコピーは……。
『今を生きるということ』
さほど、褒められるほどのフレーズではないけれど。
これは私の願いだ。
大事な人を失って、暗闇の底に溺れていた掛川さん。
私は過去を生きている、と言って、私との間に一線を引いた掛川さん。
だけど、そんな彼が立ち上がって、過去ではなく今を生きるきっかけ。
それが、このコンサートなんだ。
そんな掛川さんに、きっと勇気づけられる人はたくさんいるだろう。
掛川さんの事情を知らなくたって、復帰コンサートに心を動かされる人は、たくさんいるはずなんだ。
「このポスターが完成したら、県内の公的機関すべてに貼ってもらいます。パンフレットも、色んなところに置いてもらいましょう。」
「瞳子さん、頼もしいですね。」
「ふふ、私は一応、県庁職員ですから。……たまには職権乱用しても、いいですよね。」
「本当に、何から何までありがとう。だけど、瞳子さん、無理していないですか?」
「いいえ。大丈夫です。ここのところ、アドレナリンが出っ放しです!こんなに嬉しいイベント、今までの人生で初めてですから。」
本当に、そうなんだ。
こんなに嬉しいことってない。
大好きな人の、大事な復帰コンサートを手がけることができるなんて。
「瞳子さんには、最前列の一番いい席を用意します。薫と一緒に来てほしい。」
「ええ、もちろん行きます。」
涙が出るくらい嬉しくて。
掛川さんの復帰コンサートの成功を、心の底から祈った―――