世界で一番好きな人
目が覚めた。
真っ白な天井が目に入る。
私、何をしているの?
薫ちゃんを連れて、コンサートに行かなくちゃ。
早くしないと、コンサート、終っちゃう!
「瞳子さん!」
薫ちゃんの声に、はっとする。
「ここ、病院?」
「そうだよ。……瞳子さん、動かないんだもんっ、」
薫ちゃんが、大泣きしながら私の胸に飛びついた。
「何度呼んでも、起きてくれなくてっ、私っ、」
ごめんね、と繰り返して薫ちゃんの背中をさする。
背中越しに壁の時計を見ると、コンサートはあと5分で終わる時間だった。
だめだ。
もう、間に合わない―――
「雪人さんに、電話してっ、」
「掛川さんに電話したの?!」
「うん。そしたらね、落ち着いてって。救急車を呼んで、って言われたの。……もう、どうしても戻れないからって、」
何と言うことだ。
掛川さんの復帰コンサート。
誰よりも、私はその成功を祈っていたのに。
一番悪い形で、掛川さんを追い詰めた。
掛川さんのトラウマを、呼び起こすようなことをしてしまった―――
その時、看護師さんが入ってきた。
「あ、俵さん、点滴終わりましたね。しばらく休んだら、帰っていいですよ。」
「……はい。」
「俵さん、最近頑張りすぎてたんじゃないの?過労で倒れたのよ。これからはもっと、体を大切にね。」
呆気なくそう言われて。
こんなにしょうもないことで、掛川さんと薫ちゃんに大きな心配を掛けてしまったことを、心から悔やんだ。
いつまでもここにいるわけにもいかなくて、私は病院で貸してくれた寝間着から、運ばれたときに着ていたワンピースに着替える。
あまりにも、病室に似合わなくて恥ずかしかった。
「瞳子さん、よかった。」
「薫ちゃん、ごめんね。」
やっと泣き止んだ薫ちゃんを、胸に抱く。
ずっと、お母さんの面影を探していた薫ちゃん。
そんな薫ちゃんは、母親が病気で亡くなったことを知っている。
だからこそ、怖かったんだと思う。
私が、呼びかけても答えなくなって、どれほど怖かっただろう―――
泣き止んでも、その小さな背中は、ずっと小さく震えていた。
私は、しばらくそのままで、薫ちゃんを抱きしめていた。
真っ白な天井が目に入る。
私、何をしているの?
薫ちゃんを連れて、コンサートに行かなくちゃ。
早くしないと、コンサート、終っちゃう!
「瞳子さん!」
薫ちゃんの声に、はっとする。
「ここ、病院?」
「そうだよ。……瞳子さん、動かないんだもんっ、」
薫ちゃんが、大泣きしながら私の胸に飛びついた。
「何度呼んでも、起きてくれなくてっ、私っ、」
ごめんね、と繰り返して薫ちゃんの背中をさする。
背中越しに壁の時計を見ると、コンサートはあと5分で終わる時間だった。
だめだ。
もう、間に合わない―――
「雪人さんに、電話してっ、」
「掛川さんに電話したの?!」
「うん。そしたらね、落ち着いてって。救急車を呼んで、って言われたの。……もう、どうしても戻れないからって、」
何と言うことだ。
掛川さんの復帰コンサート。
誰よりも、私はその成功を祈っていたのに。
一番悪い形で、掛川さんを追い詰めた。
掛川さんのトラウマを、呼び起こすようなことをしてしまった―――
その時、看護師さんが入ってきた。
「あ、俵さん、点滴終わりましたね。しばらく休んだら、帰っていいですよ。」
「……はい。」
「俵さん、最近頑張りすぎてたんじゃないの?過労で倒れたのよ。これからはもっと、体を大切にね。」
呆気なくそう言われて。
こんなにしょうもないことで、掛川さんと薫ちゃんに大きな心配を掛けてしまったことを、心から悔やんだ。
いつまでもここにいるわけにもいかなくて、私は病院で貸してくれた寝間着から、運ばれたときに着ていたワンピースに着替える。
あまりにも、病室に似合わなくて恥ずかしかった。
「瞳子さん、よかった。」
「薫ちゃん、ごめんね。」
やっと泣き止んだ薫ちゃんを、胸に抱く。
ずっと、お母さんの面影を探していた薫ちゃん。
そんな薫ちゃんは、母親が病気で亡くなったことを知っている。
だからこそ、怖かったんだと思う。
私が、呼びかけても答えなくなって、どれほど怖かっただろう―――
泣き止んでも、その小さな背中は、ずっと小さく震えていた。
私は、しばらくそのままで、薫ちゃんを抱きしめていた。