ゆきあそび
蝉が鳴き始めた。
ひまわりと青い空が、白い塊に映える夏。
自転車でプールに向かった。
肌は綺麗に焼けて、ランニングシャツの形に白い肌ができた。
畠が来ていた。
畠は学校1いいやつだと思っていた。
それだけで私は好きになった。
顔も運動も勉強もいまいちだったが、
こむぎも好きだった。
何故なのかわからない。けど、恋はそんなもので、自分と釣り合う人を好きになるようにできているんだと思う。
畠は、山本とふざけながら頭に傷を負っていて、私は心配していた。
こむぎもそうだったろう。
こむぎは一言もそんな事言わなかったが。
プールの中に入るには、ゴーグルが必要だったが、忘れてきていた。
私は自転車にもう一度のり、家に取りに帰ろうとしたが、畠が声をかけてきた。
「何で帰るんだよ」
笑いながら、畠が言った。
「ゴーグル忘れたから」
私がそう言って背中を向けると、貸してやろうかと山本が言った。
「何で2つももってるの?」
畠もこむぎも、そこにいた皆が笑った。
「新しいやつ買ったから、前のゴーグル入れっぱなしだったんだ」
山本は楽しげに言った。皆を笑わせた事に満足した様子だった。
子供は相手を笑わせる事に喜びを感じている。
そして、笑いたいのだ。
山本のゴーグルを借りて私はプールに入った。
借りる事に抵抗を子供は感じる事はないのだ。
相手と自分の違いなど感じないみたいに。
近い人間にあわせる。
クラスで少し頭が悪い人間は、汚いと言ってその人が触った所を嫌がる事がある。
それは、大半が自分の友達とあわせていただけだった。
汚い服や頭が悪いと感じていないからだろう。
自分も充分頭が悪かったり汚いとわかれば、
他人をいじめる事がないのだ。
ある程度の値踏みを自分自身にしている。
同調の中で、清潔や頭の良さは重要だった。
子供に大人が求めてきた事だからだ。
それが出来ない者を異物と考えるのだろう。
清潔に出来ないなら、勉強が出来ないなら叱られるはずだからだ。
何で出来ないの?と大人が求めている事を、
子供は無意識の中で、トラウマのように
同世代の人間に求める。
それが、私たちが産まれた世界の支配の姿だった。
成長期に親に反発するのは、支配から逃れたい一心にするのだ。
自分のするべき事をさせる大人が求めている事をこなせないから、反発する。
汚いと嫌がったあの子と同じ人になったのだ。
自分自身を自分自身の異物には出来ないから、
親に反発するのだろう。
そうすれば、自分は自分自身の中で異物ではなくなる。
他人の損失が自分の利益で、自分の損失が他人の利益なのだから、足の引っ張りあいの中にはいり、人は人を愛せなくなっていく。
思春期に子供は焦り、もがく。
もがきは、必然的に行わる。
早く大人になりたいのだ。
誰よりも先に大人になれば、自分に利益が生まれるからだ。
優秀な人と仲良しなら、自分にも利益があると成長の中でわかったからだ。
大人にも優劣があると、子供にはわかる。
あんな大人になりたくないと思うのだ。
あんなとはなにか、
誰かが馬鹿にしている誰かだ。
誰かの役に立つ人間は愛され、人がよってくるし、助けたくなるからだ。
人のかかわり合いの中で、人がよってくる事こそ人生の喜びだ。
愛を交換し合う喜びが。
人は皆、喜びを感じたいのだ。