恋スル。
「恭平、先に席取ってるわ」
「おう、コウさんきゅー」
コウはそのまま店内に消えてしまい、レジの前にはわたしと澪と橘くんが残された。
「…あ、さっきのはコウって言って、俺と同じクラスの長谷 宏介。
もしかして田中さんアイツ怖かった?」
「ううん、全然そんなことないよ!」
「なら良かった」
澪が笑うと、橘くんもホッとしたように微笑んだ。
恋する相手、澪だから向けられる笑顔。
それを見て、わたしは胸がぎゅーっと苦しくなった。
「わ、わたしも席見てくるね!
混んできたから早めに確保しとかないと」
「え?でも、花陽…」
「良いから!ね?」
泣いちゃだめ。
これ以上ここにいたら、二人を見ていたら涙が溢れそうになるから、大丈夫と言って二人から離れた。
店内は既に混んでいて、空いてる席を探そうと、壁に沿って立ち空席ができるのを待つことにした。
…なかなか空かない。
みんな食べ終わっても話し込んでいて、席を立つ気配がなかった。