恋スル。
田中 澪は…
わたし、久住 花陽の幼稚園からの幼馴染。
長身で美人、成績もスポーツも得意。
同じ女子でも憧れるほどのパーフェクトガール。
「ありがとう!
アド、交換してもいい?」
「あ、うん。ちょっと待ってて」
携帯で赤外線を準備する間、わたしは胸の中がぽっかり空いたみたいだった。
ちゃんと笑えてるかも分からない。
でも、いくら悲しくても、橘くんとアドレスを交換して別れた後でも涙は出なかった。
…て言うか、慣れた。
やっぱりねって感じだなぁ。
いつもいつも、みんなはわたしじゃなくて、わたしの隣の澪ばっかり見る。
特別ブスじゃないとは思うけど、特別かわいいとか、特別美人って訳でもないから、わたしはいつも澪の引き立て役。
それでも、澪は性格も良いし、昔からの親友だから、嫌いにはなれない。
「また失恋かぁ…」
誰もいない教室で、わたしは静かに携帯を開いた。
ずっと欲しかった、橘くんのアドレス。
こんなカタチで手に入るなんて。
ため息をついて、携帯を閉じた。