恋スル。
「…泣いてるのか?」
振り向くと、知らない男の人がわたしを見て目を丸くしていた。
そしてすぐに手を引っ張られ、廊下の端に連れて行かれた。
「えと、あの…?」
「あ、悪い」
そう言って、手を離された。
誰なんだろ、この人…
橘くんみたいに長身で、でも橘くんとは違うタイプの人だ。
橘くんは、こげ茶のゆるいパーマで、いつも笑顔だし、王子様系って言うのかな。
この人は、何て言うか…
橘くんより明るい茶髪で、制服も着崩してるし、そして、少し威圧的なオーラがあって怖いかも。
「昨日、恭平が無神経なこと言って悪かった」
「………え?」
…どういうこと?
「あー…
俺、アイツのダチで」
「あ、はい」
「ダチのアイツが好きなやつと仲良いお前のことも俺の視野に入る訳で…」
「はい…」
「お前さ、恭平が好きなんだろ」
「へっ…?!!!
そそそ、そんなことないですよ!!」
「いや、バレバレだから。
恭平は鈍感だから気付いてなくて、だから昨日みたいなこと頼んだみたいで」
「そっか、周りにはバレバレだったんだね…」
「俺が止めときゃお前を傷付けずに済んだのにな、悪かった」
突然下げられる頭。
何で友達ってだけでこんなことするんだろう。
この人は何も悪くないのに。
「頭を上げてください。
少しへこんだけど、慣れてるし、澪が相手ならわたしは嬉しいくらいです」
「…じゃあ、何でそんな辛そうに笑うんだよ」
「辛くなんか…ない、です」
見透かされた。