恋スル。



「あ、久住さん」



橘くん…

移動教室で廊下を歩いていたら、橘くんに会った。

橘くんに澪のことを頼まれてから、3日目。

こうして、橘くんとわたしは挨拶をするようになった。



「次、化学なの?」

「あ、うん」

「へぇ、化学って難しそうだよね」



わたしの持つ教科書を見て、顔をしかめる橘くん。

その仕草がかわいくて、胸がきゅんとした。


そして、同時にズキンと痛んだ。



「み、澪は日直で準備の手伝いあるから先に行っちゃってて…」

「そうなんだ?
先生によっては日直を雑用係みたいに扱うから大変だよね」

「そうだよね」



聞かれてもないのに、澪のことを話してしまう自分が嫌い。

今はわたしに話しかけられてるのに、どうしても橘くんがわたしの先に澪を探してるんじゃないかって不安になる。



「そうだ、今度さ遊びに行かない?」

「え?…でもそれって橘くんと澪の」

「いや…俺と二人でって言ったら、田中さん断りそうだからさ」



確かに澪なら断る可能性が高いけど。


美男美女の澪と橘くんに、わたし。

この組み合わせは、明らかにわたしだけ浮くよね。



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