Dear…愛する貴女よ
「ハイ、おべんとう。ないと困るでしょ?」

ものすごい笑顔でやたらとかわいい包みにくるまれた弁当を出してきた。

「べっ・・」

弁当・・。い、いや、弁当って!

「いらねーよ」

こんなもんのためにコイツはわざわざ男子校までやってきて、オレはこんなもののために全力疾走したのか・・?

だけど、ゆりの顔は少し悲しそうな顔をして一息ついてまた微笑んだ。

「そんなコト言わずに食べてみて・・?ねっ?結構おいしくできたとおもうの、自信作よ!」

・・あんな顔させたんじゃ・・もらわないわけにはいかなかった・・。

どこの誰だろうと、女にあんな顔をさせてしまったことにオレは少し反省をした。

そして・・少し心がチクッと痛んだ・・。

「はい、啓くん」

ゆりは満面の笑みでオレの両手に弁当をおいた。

オレの両手が少し温かくなる・・。

「だけど、早弁とかはしちゃダメよ!ちゃんとお昼に食べてね」

「はいはい」

早弁て・・中学生じゃねーんだから・・。

「じゃーねっ、啓くん。寄り道しないでまっすぐに帰ってきてねー!」

「・・さっさと帰れ」

満足そうな顔をして手を振りながらゆりはこの男子校をでた。



やれやれ・・

「ひょーーー!啓くん、かっわいーーー!!」

クラスの奴らが教室の窓からオレを冷やかす。

「てめーらぁーー!うっせーーぞっ!!」

オレは校庭のど真ん中で3階の教室の窓にむかって大声で怒鳴った。

ゆりとのあのやりとりを一部始終見られてたと思うとあのクラスに戻るのもイヤになる。

「・・はぁーーーーー」

オレは深いため息とともにトボトボと校舎に向かって歩き出す。

ふと視界に入った弁当をみつめた。


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