Dear…愛する貴女よ
「啓くん、先に食べてもいいのよ・・」

ゆりは少し微笑みながらやさしく言う。

「いっ、いいよ。そんな腹減ってねーしっ」

・・食えるかよ・・お前が親父のために作ったものをオレが一人で・・。


「そうだっ、啓くん、お風呂入ってきたらどう?」

少し気まずくなったオレたちの空気にゆりは気を使っていた。

「あ、ああ」

オレも今この場に居ずらくなっていたのでちょうどいい。


オレは席を立ってバスルームへ行った。

シャワーを全開に開ける・・。

「・・・」

親父のヤツ・・マジでなにやってんだ・・。

もう夜12時すぎてんぜ・・。

オレは別に親父なんかどーでもいいけど、ゆりがどこか寂しそうな顔をする・・。


オレ・・ゆりのそんな顔が苦手だ・・。

今までどんな女にどんな顔されても何とも思わなかったのに・・ゆりの顔だけは・・いつも気になる。

普段人の弁当に殻入り卵焼きを入れるゆりが今日の親父を迎えるための料理をどんな気持ちで作っていたか・・ずっとみててよくわかる・・。



オレ・・シャワーを浴びてても・・ゆりのことばっか考えてる・・。




いくらシャワーを頭にかけても消えることがない。









「オイ、親父帰ってきたか?」

オレは浴室から出てリビングへ入った。

「寝てんのかー?」

・・返事が返ってこない・・。

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