Dear…愛する貴女よ
よくみるとゆりはソファで寝ていた。

テーブルを見回すと戸棚に飾られてあったブランデーやウイスキーの数々がほとんどあけられていた。

ゆりは火照った赤い顔を涙で濡らしていた。


「ゆ・・り」

これを飲んでいたゆりの心境を思うといたたまれない・・。

きっとオレと話しながらもいろんなことを考えて・・考えて・・いっぱいいっぱいになったんだろう・・。

口ではおっとりと大丈夫、っていうけど・・心の中は、不安でしかたなかったんだろうな・・。



オレ・・変だ。

ゆりのこと見てたら・・熱くなってきた。

眠りながらも流す涙は親父に向けられたもの・・。


そんなことわかってる。


だけど・・


「ゆり・・・」


オレは半乾きの髪の毛をかきあげながら眠っているゆりの顔をじっと見つめた。


スローモーションのようにゆっくりと顔を近づける。

そして・・アルコールの匂いが残るゆりの唇に自分の唇をそっと触れさせた。


「・・・」


「・・う・・ん・・ん・・・」

ゆりは寝ながら手を伸ばしてきた。

きっと夢の中で親父と感動の再会でもしてるんだろう・・。
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