Dear…愛する貴女よ
「じゃあお前はなんなんだよ!?お前だって将来なんか考えてんのかよ!?こんなとこで帰ってもこない親父待ってなにしてんだよ!?」



・・・。

やべぇ・・・。

オレ、何八つ当たりしてんだ・・。

わざとゆりのこと傷つけるようなこと言ってしまった・・。

なに情けないことしてんだ、オレは・・。


「そう・・だね・・ごめんね・・」

それでもゆりはあんな酷いことを言ったオレに優しく微笑んだ。


オレはますます自己嫌悪に陥る。


「・・ごめん・・ゆり」


「ううん・・。ただね、啓くん・・よく人は後悔のないようにっていうけれど、そんな先のこと今わかるわけがないと思うの。最初から後悔のない人生を慎重に選んでいたらちっとも前になんて進めない」

ゆりがオレの目を真剣に見ながら話しだした。

いつもオレがみているドジでヌケている女じゃなく、オレよりも少し長く生きている大人の女が目の前にいた。


「・・だからね、啓くん。後悔なんて考えないであなたの今一番したいこと・・それが今わからなかったりやっぱり進路が全然決まらなかったら大学に行ったらいいと思う。大学はそんな不純な動機で行くとこじゃないかもしれないけど・・・」

ゆりはひとつひとつ言葉を選びながら話していた。

・・・もしかして自分と重ねながら話しているのかもしれない・・。

「大学ってただ勉強をすることじゃない。たくさんの人たちがきっと大学を出た後のことを悩んでると思う。そのことを考える場所でもあるんじゃないかな・・・」


・・・オレはやっぱりガキだ・・。

こんなところでゆりとの差を見せつけられる。

ゆりはしっかりと大人だ。
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