Dear…愛する貴女よ


ゆりも・・未来も・・なんにもない。

することも見つからないし・・ゆりしか考えられない・・。


オレってこんな人間だったんだな・・。

ゆりに逢って、ゆりが去ったとき初めてわかった・・。


「啓は頭いいから大学だってらーくらくに受かるよな!
がんばれよーーっ」


あのヤロー・・夢を語るだけ語って去っていきやがった・・。

屋上で一人・・またパンを頬張る。



・・受験・・?そんなモンやったってしょーがねーだろ・・?

何もすることねーんだから。

ゆりは何かをするために・・それを見つけるためにも大学に行った方がいいって言った。


でも、オレはそれさえも放棄してしまいそうだ・・。

オレ自身救いようがない・・。


こんなオレ、最近自分でも疲れてくる・・。

いっそこのまま時間が止まってしまえばいい・・。



そう・・昔まだ両親も仲が良くて幼かったあの頃・・オレは親父を尊敬し、そして、親父の仕事が好きだった。

将来は親父が気に入ってくれるようなオモチャの設計をして、自分の手から新しいオモチャをつくりたかった。

小さい時からスケッチブックに自分の欲しいオモチャの絵を描いては親父に見せていた。



それはたかが幼稚園児の子供の小さな夢だったけど、それでもそんな子供の大きな将来だった。



・・今は・・何も感じない・・。


「・・・・」


煙草をくわえ天を仰いだ。

空は、真っ青で雲一つない。

頬に一筋、涙がつたった・・。


そう・・少し、昔をうらやましながら・・。


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