獣は小鳥に恋をする
今は昼休み。
隣にその彼はいない。
どうやらお昼はいつも教室ではなく別の場所でとっているらしい。
普段は常に机に顔を伏せて眠っている。
ぼさぼさに伸び切って整えられていない髪のせいで顔ははっきりと分からないものの、不意に髪の隙間から除く瞳は普通の人のそれとは思えないほど恐ろしいと聞いた。
まだ澪はそれを見てはいないが。
根元に黒髪がのぞく金髪に着崩された制服。どんなに先生に注意されてもそれを直すことはない。
校外で暴力沙汰を起こしているという噂も流れている。
校則の厳しい進学校で唯一といっていいヤンキーなのだ。
「でも頭いいでしょあの人」
「えっそうなの?」
予想外の情報に澪は驚いて声を上げる。
いつも授業中は先生の話も聞かずに寝ているのだ。てっきり頭はそんなによくはないとばかり思っていた。
「この前のテスト、ほら、あんたがめでたく初・赤点とっちゃったテスト」
「ああーーそれ言わないでーー!」
「はいはい。で、その時は学年で二位だったよ確か」
「...ええっ!!?」
澪の大きな驚き声は教室中に響いたのだった。