獣は小鳥に恋をする








さて。



今、昼休みあとの五時限目。



数学の授業だがこの先生は出席番号順に当ててくるので、今日はあてられる心配はないことが事前に分かっている。



だから安心して授業を受けられる。



澪はチラリと隣の席をうかがった。



(如月 葵くん...)



そこにはいつの間にか戻ってきた葵が机に顔を伏せて眠っていた。



金髪が目に鮮やか。



その隙間から覗く瞼はしっかり閉じられており、教科書やノートが全く出されていないことからも眠っていることが分かる。



いつも通りだ。



どうしてこんな調子で頭がいいんだろう。



澪は「ううーん」と頭をひねって唸る。



そんな時。



「吉塚!」


「はっはい!!」



突然名前を呼ばれて慌てて返事をし、思わず立ち上がる。



途端にクラス全員の視線が澪に集まり、澪は顔を真っ赤にした。



「おぉ、いい返事だな吉塚。その調子で隣の寝坊助を起こしてやれ」



どうやら澪があてられたわけではなく、標的は葵らしい。



数学教師であり、クラス担任である椎名。



葵に対して物怖じすることのない数少ない教師である。



(起こせって言われても...)



金髪のその姿はやっぱり怖い。



だが恐る恐る手を伸ばして、葵の肩に触れた。



「き、如月くん?起きてください...」



か細く小さい声で話しかけるが起きる気配はない。



「吉塚ーもっと大きな声で―」



椎名が教壇からダルそうに声を上げる。



(人の気も知らないで―!)



そうは思いながらも、今度は少し強めに肩をゆすり、先ほどよりも大きな声で名前を呼んだ。



「如月くーん!椎名先生が呼んでるよ!起きて下さーい!」



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