獣は小鳥に恋をする
ドアをあけ、オレンジ色に染まった教室の中を覗く。



すると、俺の席の隣に人が居た。



顔を伏せて寝ているようだ。



黒い髪が、オレンジに輝く。



吉塚 澪。



彼女だった。



彼女を見下ろし、固まる。



鼓動は高まり、美しいその顔に見惚れる。



消して派手ではないが、整った顔に



サラサラとした黒髪が美しく映える。



無意識のうちに、彼女のやわらかそうな肌に手を伸ばす。



自分が触れれば、穢れてしまいそうな白い肌。



その頬にかかった黒い髪を、肌に触れないように指ですくう。



「............ぅん.........」



「!」



起こしてしまったのかまぶたをピクリと震わせ、声を漏らす。



その声に驚いて、とっさに俺は伸ばしていた手を引いた。



ゆっくり開かれるまぶたを見つめながら、ピシリと完全に固まってしまった俺。



完璧に覚醒はしていない虚ろな目が、少しずつ上へとのぼり俺の瞳を捉える。



「...あ.........如月...くん」



「!!」



ああ、その声で呼ばないでくれ。



今、呼ばないでくれ。



胸が苦しくて、どうにかなってしまう。



「如月くん.........」



───え、何で...........................



俺は目を疑った。



目の前の彼女は、泣いていたのだから。



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