たとえ誰かを傷つけても
放課後・・・

「八神君」

下足室で靴を履き替えていると、りーちゃんがやってきた。
あー来ちゃったなこの時が・・・

なんか気まずくて今日一日りーちゃんを避けていたんだ。でも、逃げてもしょうがなか・・・俺は意を決して笑顔で振り返った。


「中谷・・・土曜日はごめんな。」

「ううん。今日は元気そうだね。」

「元気元気。調子悪かったのあの時だけだよ。はしゃぎすぎたのかな?」

笑顔の俺につられるようにりーちゃんもにっこり笑った。

「だったらよかった。」

「うん。あ、ハンカチ持ってくるの忘れたな。」

「あ、いいよ、そんなこと・・・それより・・・本当に体の調子悪くない?」

「えっ?うん」

俺がうなずくと、りーちゃんはちょっと考えたようにうつむいた・・・がすぐに顔を上げた。そして言った。

「八神君に相談があるの・・・聞いてくれないかな?」

相談があるの・・・

俺の一番きらいな言葉だ。
はっきりいってトラウマと言っていい。
好きな子の相談にのってやった日にゃろくな事はない・・・

でも、断らないんだろうな。
誰にでも優しくて人当たりのいい八神君は・・・
案の定心の奥底の意志に反して俺はにっこり笑った。


「いいよ。なに?」

「ここじゃ・・・ちょっと」

「じゃあ、外出ようか?」

俺の声にりーちゃんはうなずいた。
そして彼女も靴を履き替え俺達は二人ならんで校門を出ていった。

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