たとえ誰かを傷つけても
そう、ちょうどこの場所だった。
誰もいないと思っていた・・・誰もいないはずだった・・・
だから、俺の肩に何かが触れたとき、俺はびっくりして無防備な泣き顔のまま後ろを振り返った。

そこにはりーちゃんがいた。

自転車から降りて心配そうな顔をして立っていた。
俺は何を言っていいのか、どうしていいかわからずにただ、りーちゃんを見ていた。
りーちゃんは何も言わずに俺にハンカチを差し出した。
俺は動けずにそのままでいたら、りーちゃんは俺の手にハンカチを握らせてくれた。
そして一言

「ごめんね」

と言うと慌てたように自転車に乗って行ってしまった。



俺はしばらくそのハンカチを握りしめながらりーちゃんの言葉の意味を考えていた。

「ごめんね・・・」

なにが「ごめんね」なんだろう? 

「泣き顔見ちゃってごめんね?」か? 

「おせっかいなことしてごめんね」・・・か?


何はともあれ、あの日から俺はりーちゃんのことが気になりだした。
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