あまのじゃくな彼女【完】
1* はじまりの夜
1:
窓から見える木々が青々としている。
もくもく、という表現がぴったりな入道雲。
木々の揺れから風を感じる。
ちらりと見える外の様子から、絶好の昼寝日和だなぁ・・・と思うと、
同時に出そうになったあくびをかみ殺した。
「・・・さん?聞いてた?」
「ぁ・・・ごめんなさい、もう1度いいですか?」
男の呼びかけに、ふと我に返った。
埃っぽい資料室に呼び出され、えぇ・・・と何とかさん、名前もうろ覚えの男と対峙していた。
「いやだからね、俺と付き合わない?」
「ぇ・・・?なんで・・・私なんですか?」
目を丸くした、意識的に。
びっくりなんかしないけど、儀礼的にとりあえず聞いてみる。
「吉村さん、きれいだしいつも穏やかですてきだなって。
おしとやかで支えてくれそうな感じ?吉村さんとなら俺、うまくやれそうなんだよね」
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