あまのじゃくな彼女【完】
頭の中でぐるぐると疑問や戸惑いと格闘して、思わず眉間にしわを寄せる。
頭でっかちになる私に気づいた由梨が、グラスから口を離すと澄ました顔で話し出した。
「ありえないって言っても、あんた達既成事実あるでしょ」
ぶふっっとワインを吹き出すと、慌てておしぼりを手探りで探した。
「え?・・・え!・・・・えぇー!!!聞いてないですよ、私!!」
由梨の発言を聞き逃さなかった千葉さんに、ぐらぐらと身体を揺さぶられる。いや、それよりおしぼりとってよ。
「由梨!人聞きの悪い事言わないで、あんなの事故よ事故」
「はぁ?事故でキスするような人なの?あんたのシュンちゃんは」
「私の知らない間にそんな進展があったんですか!!」
千葉さんは目をらんらんと輝かせ、聞き逃すまいと私達の顔を食い入るように見つめてくる。
だけど、その目にちゃんと応えられるような答えを私は持っていない。
「分かんない、私の知ってる“シュンちゃん”じゃない。あれは・・・“高遠係長”だもん」
由梨の言葉に、自分のなかの薄暗い渦が増幅する。
初恋の人だった“シュンちゃん”、皆のあこがれの上司“高遠係長”。
どこか納得できずにつのる不信感。あの人は本当に私の知っている彼なのだろうか。
自分の中で消化できない気持ちを抱え、また答えの出ないループに迷い込んでいた。