あまのじゃくな彼女【完】
あの無限ループの中、彼が何者かなんて答えは出なかった。それでも毎日顔を合わせる日々。
とりあえず、“係長”に失礼の無いように目の前の仕事をこなしていくのに必死になった。
「山下・・・と、何話してたの?」
私に向けていた視線をすっと後方へとむけ、尋ねられた。少し口調が砕けるのに気がつく。
「あ、今度の物撮りに顔を出すように、だそうです。今度の監督とは以前の撮影で顔見知りなので、それで」
「・・・そう。俺も顔出すからよろしく」
立ち去るときにはいつものオフィス用の顔。
あれ、一瞬〝シュンちゃん”になったのは気のせいだった?
ダメだ私、無意識にシュンちゃんを探してる。
係長を見送り、邪念を振り払うよう足早にオフィスへと戻った。