あまのじゃくな彼女【完】
「めぇちゃーん」
野太い声でおいでおいでと手招きされる。甘ったるい話し方は相変わらずのようだ。
「舞原さん、お久しぶりです」
「いやん、舞ちゃんって呼んでって言ってるでしょ。相変わらずお肌キレイねぇ、羨ましい!」
監督の舞原さんはいかつい見た目とは裏腹に、中身はグレーゾーンの乙女だ。 実力は折り紙付き。
前回のスポーツ飲料のCMは社内でも好評で、売り上げ好調。続く新商品の開発も決定している。
その撮影で何だかうまが合った私達、それでこうして私も撮影に呼んで貰えたのだろう。
「舞さん好きな『皐月堂』のどら焼買ってきましたからね。今日よろしくお願いします」
「めぇちゃんってば分かってるぅ!今日もめぇちゃんあてにしてるから、よろしくね」
両手を挙げて喜ぶ姿は女子高生みたいだ。まぁ、どら焼って所が渋いけど。
「舞さん、すみません」
スタッフに呼ばれプロの顔に戻ると、舞原さんは仕事へと戻っていった。