あまのじゃくな彼女【完】
まじまじ観察しながら記憶をたどるが、いまいちピンとこない。
「ぷっ、俺だよ森枝。高校一緒だったろ?」
その名前に一瞬で体温がぐっと下がるのを感じた。
「思い出せない?一応は元彼だろ」
「久しぶりだね・・・森枝」
どうにか取り繕った笑顔を貼り付け、森枝の顔を見上げた。少しやせただろうか。以前より線は細くなったけど、視線の高さは変わらずぼんやり昔の姿が重なる。
「お前コーエン就職したんだ?」
「うん、そうなの。森枝は・・・舞原さんの所に?」
「そう。専門いってカメラの勉強して、卒業してからライトモーションにな。このCM担当なんだ?よろしくな」
「こちらこそよろしくね」
どうにか笑顔で見送るが、表情とは裏腹に気持ちは冷えきってきた。
せっかく入れた気合いも一気に萎えていくのを感じた。