あまのじゃくな彼女【完】
カチャっとゆっくり扉が開くと、メガネをはずし小さくため息をつきながら係長が入ってきた。
「めい・・・?」
しゃがんだままで顔をあげ係長を見上げる。予想と違い穏やかな顔をしていることに少し安堵した。
「あの、データ・・・すみません」
「うん、だからそれを言いにきたんだって。大丈夫」
しゃがみこんだままの私に視線を合わせるよう、ゆっくりと腰をかがめた。
私を安心させるためなのか、口調も普段のになっていた。
「あいつ知り合いだったの?」
森枝の事だろう。名指しで話していたし、その前の会話も聞こえていたみたいだ。
「高校の時付き合ってたの」
あぁ・・・と低く唸ると、不機嫌そうな顔で片手で自分のねこっ毛をかきむしった。
「まぁ好きだった奴に言われちゃな・・・ショックだよな」
かきむしっていたその手を私の頭へ移すと、ポンポンとなだめるようにゆっくりと頭を撫でられた。
「他にもいい男はいっぱいいるから、早く忘れ」
「違うのっ・・・!」
「森枝が、忘れられないわけじゃないの」
急に大きな声を出した私に驚いたようで、シュンちゃんは頭を撫でていた手をびくっと止めた。