あまのじゃくな彼女【完】
最悪な再会、傷口をえぐられた・・・はずだった。
だけどあの日以来、憑き物がとれたみたいに気持ちはやけにスッキリとしていた。
『お前はお前で良いんだよ』
似たような口説き文句を言われた事くらいある。そんな事言ったって結局はみんな同じって聞き流してきた。
だけどなんでか、シュンちゃんのあの言葉はひねくれる事なくすんなり受け入れられたんだ。
自分を取り繕ったりしない。本当の自分と向き合おう、そんな気持ちになっていた。
「そういえば、千葉さんはどうなの?あれから作戦実行できた?」
「それが聞いてくださいよー!他の人にも聞いたんですけど、誰も山下さんの自宅知らないんですぅ」
前回検討していた、“突撃!手料理大作戦”はどうやら実行に移せていないようだ。
「相変わらず差し入れは食べてくれるんですけど、まぁ・・・相変わらずなんです」
むぅっと唇をとがらせる千葉さんは相変わらず隙が無い。見かけだけじゃなく、仕事っぷりもますます磨きがかかってきたところだ。百戦錬磨の彼女をここまで困らせるとは、山下さん恐るべし。
「あ、そうだ!芽衣子さん、係長に山下さんの自宅聞いてみてくださいよう。あと聞いてないのって係長ぐらいですし」
「え?うーん分かったわ、とりあえず聞いてみるよ」
社員と一線引いてる係長が知っているとも思えないけど。ダメもとでも聞くだけ聞いてみよう。