あまのじゃくな彼女【完】
会社の正面玄関から少し離れた街路樹の脇。レンガ造りになった段差にもたれるように立つと、腕時計で時間を確認した。
「悪い、遅くなった」
駆け寄ってきた係長はごく自然な流れでメガネをはずすと、スーツの内ポケットにしまった。
「遅い、15分遅刻」
「一緒にオフィス出ればよかったんじゃないでしょうかね、吉村さん」
「一緒に帰る所なんて見られたら何言われるか分からないんですのよ、係長」
THE・パーフェクトを狙う女子社員しかり、まだ残業していた由梨・千葉さんになんて見られた日には明日が思いやられる。
「なんだ、めいも意外と女々しい所気にすんだな」
ニヤっと面白がるようにこちらを伺う姿はすっかり休日モードだ。まだ会社の真ん前なんですけど良いのか。
げんなりする私の表情を確認すると、シュンちゃんはさっさと駅へと歩き始めてしまった。
「先生たち待ってるだろ、ほれ急ぐぞ」
「ちょっ、待ってよ!」
長いリーチで歩きだすシュンちゃんの後ろをあわてて追いかけた。