あまのじゃくな彼女【完】
「何でか忘れちゃったんだけど昔からこればっかり飲んでて。小学生の頃にはジュースより紅茶!ってなってたよ」
「ふーん。そら随分ませてんなぁ」
からかうようにつぶやくシュンちゃんはコーヒーに口を付けながら、何だか嬉しそうに笑ってた。
「何それ。いいじゃない、子ども心も捕まえちゃう自社製品!」
「へいへい。どんだけ会社好きなんだよ」
「何よ、シュンちゃんはうちの会社好きじゃないの?」
私の言葉に反応するように歩みを止めた。
「好きだよ・・・好きじゃなきゃ、入るわけないよな」
うつむきがらフッと自嘲的に笑う。その笑いの意味がよくわからなくて、悪い事聞いた?と不安になる。
知ってか知らず知らずか、それを振り払うようにシュンちゃんはおどけるように話をつづけた。
「んま、こんな人使いの荒い会社だとは思わなかったけどな。課長は働かないし」
「ははっ、確かにうちの課長は働かないねぇ。シュンちゃん早く出世して、あの課長使ってやってよ」
「まぁ待ってろ。そのうち出世してやるから」
冗談めいて話すものの、正直シュンちゃんの出世は間違いないだろう。
シュンちゃんに顎先で使いっぱしりにされる課長を想像して、思わず吹き出す。