あまのじゃくな彼女【完】
3 :
荒い足音を響かせ駅のホームを急ぐ。カツカツ・・・というよりドスドスという音がぴったりだろう。毎朝のうんざりする混雑と、寝不足で疲れの取れない身体を引きずるのに嫌々ながらも会社へと向かう。
「おぉ、吉村おはよう」
呼ばれた方を振り向けば、いつも通り爽やかな山下さんが小走りで駆け寄ってきた。
「おはようございます。この時間珍しいですね、最近ずっと早かったじゃないですか」
「おう、今日朝一の仕事は係長がやってくれることになってるから久々な」
聞き捨てならない単語にピクリと思わず耳を大きくする。思わず立ち止まって問い詰めたいところを、冷静に歩みをつづけた。
「係長、今日来るんですか?」
「昨日の夜連絡あって、熱も下がったから今日の仕事は予定通り大丈夫ってよ」
いやぁ助かったよ、とほっと安心したように話す山下さんをよそに、芽衣子の心中は穏やかではなかった。