あまのじゃくな彼女【完】


相変わらず山積みになりそうな書類と戦い、どうにかランチの時間を確保した。
千葉さんは案の定へそ曲げてて、「芽衣子さん!黒澤綾江が変な色目使わないよう見張っといてくださいね!!」と闘志むき出しで私に頼んできた。

とはいえ、私も現場撮影でしか会う事もないだろう、とこの時までは軽く考えていたんだ。
まさか・・・彼女に振り回される事になるなんて。




他部署へのおつかいの帰り、ぞろぞろとお偉いさん達が会議室から出てくる所に出くわした。

「おう、吉村お疲れさん」

爽やかに、そして足早に去っていく山下さんを見送る。例のCMの会議だったのだろう。端に寄り集団をやりすごすと部屋の前を横切ろうとした。




「お前、いい加減にしろよ」

聞きなれた声が誰もいなくなったはずの会議室から聞こえた。

わずかに開いた隙間からそっと覗くと、ふかふかの椅子にゆるりとかける女性らしいシルエットとそれに寄り添うスーツ姿。それと少し距離を取って立つ、いつものねこっ毛頭が見えた。

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