あまのじゃくな彼女【完】


「アイツ知ってるのか?」

「うん。目の前で車に乗せられたから」


今度こそ最大のため息をつくと、声からは呆れを超え怒りがにじんでいた。

「何やってんだ、アイツ・・・ありえねぇ。どうせお前、綾江にしょうもない事言われたんだろ。あいつシュンに妙に執着してっから」




「そんなんじゃ・・・ないよ」

どうしても宏兄の顔を見れなくて。必死に堪えているものがすべて零れてしまいそうで。
視線を合わせることなく言葉をつづけた。



「綾江さんは何も悪くない。仕事の話、しただけ・・・だから。だからシュンちゃんにも何も言わないで?どうせ会社で会うんだし、誤解のないよう言っておくから」



「・・・わかった。お前が思うようにやれ」


ポンポンと軽く頭を叩くと、うつむく私をそのままに宏兄は道場から出て行った。

パタンと扉が閉まる音がすると、床にポトっと滴が落ちた。堪えていたものは決壊し、1つまた1つと床に落ちると滴は広がっていく。


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