あまのじゃくな彼女【完】
Side *隼人*
「係長、この間の試飲会アンケート結果です。データ表と前回比較、プリントアウトしてあります」
「あぁありがとう。後で確認しておくよ」
柔和な笑顔でそう返すと、部下はペコッと軽く頭を下げそそくさと自分のデスクへ戻っていった。
大体の女子社員は俺がこうして返すと、顔を赤らめるとかはりきって仕事に取り組んだりするもんだ。それが分かっててわざとやっているのだけど・・・この子だけは違う。
「ま、当たり前か・・・」
にやけた顔を隠すよう俯きながら書類のチェックを始めた。
相変わらず仕事が早い上にミスも少ない。
昔から少々そそっかしい所はあったけれど、真面目な性格がそれをカバーしているのだろう。後輩の面倒見もいいし、部下として十分合格点だ。
『シュンちゃん、遅いよ!早く稽古始めよっ』
何の黒い感情も知らないような屈託のない笑顔で駆け寄ってくる。自分の腰ほどの小さいからだで一生懸命に腕を引く可愛い女の子を思い出す。
その姿をシンクロさせるよう、自分のデスクでモニターと向き合う芽衣子を盗み見た。