あまのじゃくな彼女【完】


炭と煙くさい焼き鳥屋に入ると、さっさとビールを注文した。べたつくようなカウンターではさすがに申し訳ないので、今日はテーブル席に陣取る。

このタイプは「イタリアンじゃなきゃ嫌!」とかめんどくさい事を言いそうだと思ったけど、意外とすんなり俺の提案を受け入れた。ここなら女子社員が来ることもないだろう。


「それで相談ってなんですか、千葉さん」

「あぁーそれいいですよ、係長。私気づいてますから、めんどくさいのやめましょう」

ニヤッと笑う千葉はいつものパーフェクトスマイルではなく、ただいたずらを企む子どもみたいだ。



「似た者ってやつですかね。係長裏があるっていうの何となく気づいてたし、決定的なのは芽衣子さんの話聞いてですかね」




千葉の言葉を合図にぐいっとネクタイを緩めると、深く息を吐いた。

「裏があるって失礼だな。それで・・・吉村がどうしたって?」

「係長、先輩に何したんですか?澤田先輩も言ってます、最近の芽衣子さん様子が変だって。仕事もちゃんとやってますし、寧ろいつもより仕事が早いくらいですけど。何か・・・変です」



それは俺も感じていた違和感だった。

いつも以上に仕事はできるし、見た目にはおかしなところはない。他の社員ともうまくやっているし、今度の現場撮影に向けた準備をせわしなくサポートしてくれている。


ただあの日、織江と帰った次の日から何かおかしい。

仕事の話しかしない・・・のは当たり前だが、妙に距離を取りたがっている。そう思わせる何かがあった。


< 183 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop