あまのじゃくな彼女【完】
「何した・・・って言われても、俺が原因とは限らないだろ。俺はただの幼馴染だ。俺以外にも吉村と関わってる奴なんかたくさんいるだろ」
そうだ。うぬぼれるな。
感じた違和感も俺のせいではないのかもしれない。
単に男が出来た、勘違いされたくない・・・そんな事だって考えられるじゃないか。
「係長以外って・・・例えば誰です?」
何言ってんだこの人、みたいな呆れた表情で聞かれ、正直俺の答えを当てにはしてなさそうだ。
千葉には申し訳ないけど、俺の中で思い当たるのは1人だけだ。
「例えば・・・山下・・・とか」
「ぶふっっ・・・!」
口にしていたキャベツを吹き出しそうになり、千葉は慌ててビールで流し込んだ。どうにか飲み干し軽く咳き込むと
「ぅははははっっ・・・!」
ツボに入ったように腹を抱えると、ひぃっっと息も苦しそうにひたすら笑い転げた。
正直こんな所みたら、オフィスの男たちは興ざめだろう・・・となんだか複雑な心境で千葉の笑いを見守った。
「あっ・・・ありえないですっ!!芽衣子さ・・・山・・・ぷっ!!」
「ありえないことねぇだろ。大体お前、先輩に自分の恋愛助けてもらうとか厚かましいぞ。吉村に山下の家教えてほしいって頼まれたんだからな」
笑いを引きずりながら、あぁ・・・と急に思い出したように頷く千葉。
「そういえば山下さんの家、係長知ってるんですか?」
「そういえばってお前・・・適当だな。知ってるけど口止めされてっから本人に聞け」
「えぇー良いですよ、自分で聞きます。正直芽衣子さんの事で頭いっぱいだったんで、最近山下さんのことほっぽってたんですよね」
反省反省、とつぶやく千葉にはそのそぶりもなく。ちまちまと酒宛てをつまんでいる。
恋愛至上主義!のイメージだったけど、思ったよりはまともなやつなのかもしれない。